東京海上日動火災保険株式会社×今治市コラボ研修

東京海上日動火災保険株式会社×今治市コラボ研修

※公認ファシリテーター 住吉 淳さん(今治市職員)からの研修実施レポートです。

パートナーシップでSDGs普及啓発促進パッケージの組成と展開を目指します!

(目的と概要)

まだ記憶に新しい令和2年10月16日。東京海上日動火災保険株式会社(以下、東京海上日動)と今治市との包括連携協定に基づく事業の一環として、市内事業所向けSDGs普及啓発プログラムの体験会を実施しました。

全国的にも珍しい、民間企業と行政とでSDGs普及啓発プログラムの組成を目指した経緯と、パイロットモデルとして実体験いただいた様子について、先方の感想も織り交ぜながら、レポートしたいと思います!

 

(協定締結の経緯)

まずはじめに、協定締結に至る経緯は、令和元年の夏に、東京海上日動から「連携して地方創生を推進しましょう」という呼びかけがあったことでした。その後、庁内関係課との協議を経て連携して取組む項目をとりまとめ、今年の2月、包括連携協定を締結する運びと相成りました。

今年2月3日の包括連携協定締結式の様子

協定は、両者が相互に緊密な連携を図りつつ、双方の資源を有効に活用した協働の取組を推進することにより、地方創生の実現を目指すものです。これまで、連携協定に基づき様々な取組を展開してきましたが、今回は「地域の困りごと」として、市内の事業者から「SDGsに取組みたいがどう取組んでよいか分からない」という声が双方に届いていたことを踏まえてタッグを組みパッケージ組成を試みたという、非常にタイムリー且つ共創的な形となりました。

(今回の取組の目的)

さて、今回は、公認ファシリテーターの資格を持つ私(市職員)が講師となり、東京海上日動の社員さんがカードゲーム体験を通じて、地方創生とSDGsを身近な我がこととして考える「きっかけパッケージ」づくりです。

ゆくゆくは、東京海上日動において、市内事業者に対して「きっかけパッケージ」を研修として提供することを目標としています。しかも今回は、コロナ禍の地元支援を兼ね、マイクロツーリズムとしてのパッケージ組成も念頭に置くという「持続可能な地元経済」を目指すものであり、地元の観光・宿泊事業者も巻き込んでの「まさにSDGsなパイロットモデル」となりました。

(ゲームへ向けて)

さて、市内の温泉地の旅館を会場にリラックスした面持ちで集まってくる社員の皆さん。文字通り「チェックイン」して集まってきます(笑)。

冒頭、市のシティプロモーション用ノベルティグッズを机上配布していたところ、そちらが大盛上がり。”本業(シティプロモーション)”の方は大成功、アイスブレイクが完璧な状態に仕上がりました(笑)

しかしながら、途中のSDGsの理解度をボディランゲージで尋ねるシーンでは、頭のてっぺんから、机上まで、手を置いている人がいてまちまち。

仮想受講者なのか?はたまたリアルなのか?むむむ・・・。

 

(ゲームがいよいよ始まった!)

第1ターン

さて、いよいよゲーム開始です。今回は、23人を2人ずつ(12チーム)に分けての実施。開始直後から、マイク無しでは声が聞こえないぐらいの盛り上がり!しかしここでも、個性というか「素」が出てました。スグ席を立つ人、じっくりカードを眺める人、「行政は他の行政部門と会話していいのでしょうか」と質問してくる人など、動きは様々、あっという間に1ターンが終了しました。

第2ターン

「人口減少を抑制するためには、まず経済が大事だ」と声を上げた行政役。皆もその声に耳を傾けますが、一方で、それぞれ、自分たちの志もある。ところが、実施されるプロジェクトの成果は、環境を伸ばしたり、暮らしを減らしたり。人資源のシェア・やりとりのいい流れができてきたところで終了。中間発表での「まちは風前の灯火です」に一同苦笑い。

第3ターン

冒頭に(行政に市長役が誕生し)「皆さんでまちの人口を増やしましょう、そのためにできることを5分間考えてから動きましょう」と“演説”。その演説のわずか30秒後、住民が大型ショッピングモールの誘致をしかけ、まちの姿が大きく変化。現実の世界でもそうですが、市井の人に、首長の声はなかなか届かないものなのだろうかとギクリ。その後は、皆がホワイトボードを見ながらプロジェクトを実施するも、中々メーターが上がりません。

第4ターン

ここで行政がふんばる!かに見えましたが、増税と減税を重ね、文化ホール建設で起死回生を狙いましたが、時既に遅し・・・。2分余り残して、皆さんが着座するという何とも振り返りがいのある結果となりました。

 

(まちの結果に対する振り返り)

まちの姿(結果)を見ながら振り返りが進んでいきます。

①自分は「観光事業者」としてかなり儲けたが、自身の事業を優先した結果、まちの暮らしやすさを低下させてしまったことが反省点。

②現実のまちの将来を考えても経済が最優先だと考えて取った行動が、逆の効果を与えてしまった。もっと行政や住民と対話をして優先順位を考えれば良かった。

③人口減少に歯止めをかけることが一番重要だと、全てが終わってから気づいた。現実世界では緩やかに時間が進んでいるため人口対策は後回しでも影響は小さいと考えていたが、影響の大きさが良く分かった。

という意見が出るなど、結果が生じた原因について洞察を得ていきます。「何となくとってしまっていた行動」の列挙例には、皆さんも強く共感していた様子。一方で「こう予想していたことが裏腹にこうなった」という結果からしっかり原因を分析しようと試みる姿などは、日頃の保険会社社員としての姿も垣間見えて、このような方々が普段からまちを良くしようと汗を流していることを嬉しく心強くも思ったりしたのでした。

○津村さんの感想と想い(東京海上日動の側から見たパッケージ)

まちの将来が燦燦たる状態になってしまったのは残念でしたが、参加した社員が口々に「参加して良かった」「SDGsの理解が深まった」と言ってくれたため企画して良かったです。ゲーム体験+SDGs基礎知識補完のパッケージを市と連携して実施出来たことで、体系的な理解に役立つ研修へと展開できたと思います。このまちでSDGsに取り組みたい事業者様に是非お勧めしていきたいです。コロナ禍でワーケーションへの注目度が高まっていますが、企業・学校等の組織向けに、「研修+旅行」というマイクロツーリズムパッケージも有効な選択肢と思い、今回地元の観光・宿泊事業者様にもご協力いただきました。今後も持続可能なまちの実現に向けて、パートナーシップを深めて行きたいと考えています。

○住吉の感想と想い(行政の側から見たパッケージ)

ゲーム体験で心と身体がほぐれたところに、第2部としてSDGsの基礎知識と東京海上日動のSDGsに関する取組をしっかり説明するのは、非常にリアリティがあって「入ってくるな」と感じました。8月下旬の両者での相談から、パイロットモデルの実施までアジャイルに活動ができたことは、新しい協働の姿であり、普及啓発プログラムとしての実現可能性にも手応えを感じたところです。

このパッケージによって、両者が地域の事業所等とつながることは、換言すれば将来的に活きる社会関係資本を形成することになり、ゲーム体験がリアルな体験とリンクします。そこに基礎知識もプラスすることで、より学びが深くなり、次の一歩が出やすくなります。

何より、公務員兼ファシリテーターには、「与信」があります。私達のような事例を参考にいただき、民間企業はそれを利用して、積極的に普及啓発パッケージを組成してみてはどうでしょうか。私自身、SDGs de 地方創生をやればやるほど、私と私の周りに変化が起こり、本業にも好影響を与え始めるなど、想像もつかない変化を「楽しんで」います。その楽しさは「熱」と言えます。その熱を連携して伝播させれば、効果は2倍!これからも、東京海上日動としっかりと連携して庁内外にSDGsを普及していきたいと思います!