公認ファシリテーターへのインタビュー!SDGs de 地方創生公認ファシリテーターは、今や全国に600名以上の方がいらっしゃいます。それぞれ様々な思いを持って活動されていますが、どんなことをされているのか、どんな思いを持っているのかインタビューを通して発信していく企画です。
第1回は、SDGs de 地方創生、SDGs de 未来構想の公認ファシリテーターであり、このたび、小冊子『SDGs導入前にチェックすべき6つのポイント』~ぶれない組織変革実践ガイド~を執筆された森伊知郎氏に、SDGsといった新しい考え方を組織に導入するために必要なポイントを伺いました。カードゲームを活用しながらクライアントに寄り添う森氏の想いとは。
会社の早期退職
長瀬:森さんのキャリアは百貨店勤務から始まりますが、早期退職された理由にはどのような背景があったのですか。
森:自分の人生に主導権を持ちたい、という想いがありました。会社員として働き始めた頃は、仕事は生活の中の一部でした。しかし、いつの間にか仕事が自分の生活の大部分を占め、自分自身が「会社の歯車」として働いていることに気づいたのです。つまり、自分の人生なのに、人生の主導権が他者に移り、自分がやりたいことや大切にしていることについて考えもしない自分がいたのです。
このような想いから、一度組織から離れて自分の人生の主導権を取りもどそう、という気持ちがありました。
カンボジア孤児院でのボランティア体験
長瀬:その後、森さんはカンボジアに赴かれます。これはどのような体験だったのですか。
森:カンボジアでは、伝統織物の生産・販売が行なわれている工芸村を訪れました。「伝統の森」と呼ばれるその村は、養蚕から機織りまで一貫して行い、自給自足の生活をしています。ここで感じたのは、「本当の豊かさとは何か?」ということです。日本の方が経済的に豊かであるはずなのに、日本人以上に村人たちは充実感を持ってイキイキと過ごしている姿に衝撃を覚えました。村人同士での強固な繋がりの上に形成されたコミュニティが地域を支えていました。この経験があったからこそ『経済のみならず社会価値や環境価値も同時に高めていく』SDGsの考え方にとても共感を持ち、SDGsを広めようとするわたしの原体験になっています。
カードゲーム『SDGs de 地方創生』の活用方法
長瀬:森さんは、SDGs de 地方創生をどのように活用しているのですか。
森:私はこれまで40回以上、自由参加型のオープン体験会や組織内研修でカードゲームを実施してきました。オープン体験会には多様な方が参加され、自分の組織でSDGsを採り入れていきたいと考えるクライアント様と出会う場にもなっています。
長瀬:クライアント様の組織に入っていくにあたり気をつけていることはありますか。
森:ここからが私の専門領域です。まずは、クライアント様への徹底したヒアリングです。
・なぜ、このカードゲームをやりたいのか?
・いま、解決したい問題は何なのか?
・これまでどんなことに取り組んできたのか?
・このカードゲームが終わった瞬間に、どのような状態になって欲しいのか?
などを丁寧にヒアリングを行います。
クライアント様の思いをどれだけ汲み取ることができるかが重要です。組織を変容していくためのポイントは、「今の状態」と「創り出したい未来」を明確にすることです。それにより創造的な緊張構造を作ることができ、解決したいというエネルギーとなっていきます。そこからアクションプランを考えていく工程になります。
長瀬:小冊子には、「自分が本当に欲しい望むものが、本物のビジョンです」という記述がありました。組織変革を考えたときには、その原動力として個人のビジョンや価値観があるということですね。
森:自分が本当に欲しいと望むビジョンから最高の動機付けが生まれますし、共有ビジョンのもとに志や価値観を同じくする者同士が集まれば、単に全部を足し合わせた以上の相乗効果が生まれます。重要なのは、自分の人生において何をしたいのかという「志」、そして自分にとって何が重要かという「価値観」です。志は決して大きなことではなく、些細なことで良いと思っています。自分が人生において創り出したいことって何か。その中で大切にしたい、他人に揺るがされたくないことは何なのか。これらは私自身が悩んできてことでもあります。自分の人生の舵を他人に任せない「リーダーシップ」を持った人を増やしていきたい、というのが私の考えです。
小冊子『SDGs導入前にチェックすべき6つのポイント』~ぶれない組織変革実践ガイド~に込めた想い
長瀬:SDGsに関する小冊子やセミナーが多い中で、この小冊子を出版しようと思った理由をお教えください。
森:SDGsやSDGs導入に関する小冊子は様々あり、どれも整理された有益な情報ですが、次のような問題が多く存在します。
・頭では理解できるけれど、実際に取り組んでみると組織内で対立や分断が一層深刻になる
・経営者の発するメッセージが現場に理解してもらえない。
・SDGsの本質的な取り組みにならず「SDGsウォッシュ」(注:SDGsに取り組んでいるように見えるが実態が伴っていないビジネスのことを揶揄する言葉)になってしまう。
SDGsという新しい考え方を取り入れるには、構造にアプローチする必要があります。組織固有の価値観や風土・DNAが行動を創り出し、その行動が現実(結果)を生み出しています。この流れを変えない限りは、新しい価値観であるSDGsの概念を導入しようとしても、構造がそのままであれば、その組織には受け入れる許容が生まれないのです。だからこそ、組織や個人で大切にしている価値観や考え方も見直しながらアプローチする必要があります。それについて書かせていただいたのがこの小冊子です。
まとめ
長瀬:最後に、SDGsに取り組む個人や組織に向けてメッセージをお願いします。
森:私が自らの仕事や活動を通して実現したい未来は「個人個人が自分の未来を自らの手で創り出していける社会を作る」というものです。
残念ながら組織に呑まれてしまい自分個人やりたいことを忘れてしまい、それを考えるきっかけもなく、何となく組織内に生きている人がいます。しかし、本物のビジョンを掲げ、志や価値観を共有することができる仲間が集まった組織は、個人の総和以上のことが成し遂げられる点で、組織は偉大です。SDGsの導入や組織変革について、小さな成功や大きな成功を得られたならば、是非その成功体験を周りの人たちと分かち合って欲しいと思います。
小冊子ご希望の方は、下記のyoutubeをご覧ください
OBRIGADO Future Creation Labホームページはこちら
インタビュアーより
わたし自身、前職はまちづくりのNPO職員として日々地域を走り回っていました。
・思い(志)を持っていたとしも息切れを起こしてしまってる人
・何かやりたい!という思いはあっても何をしていいのか分からない、できないと思っている人
など、このような人たちは地域にたくさんいます。だからこそ、今回森さんのお話を聞き、「志と価値観の両軸が大切であること」「第3者が丁寧にヒアリングし本人の思いを汲み取る、この工程が思いを具体的なアクションへ繋げること」が、すっと腑に落ちてきました。まさにそのとおりだなと。そして、このSDGs de 地方創生カードゲームを個人の思いに寄り添うツールとして有効に活用してくださる森さんに嬉しい気持ちが湧いてきました。
会社組織や地域など、対象が大きくなればなるほど個人の力や思いは影響しない、無力だと感じてしまいます。しかし、自分個人の小さな思い(水滴)が波紋となり、次第にまわりに大きな影響を与えていくこともできる。そこに気づき、自分らしく行動できる人を増やしていきたいと改めて感じました。
SDGs de 地方創生カードゲーム公認ファシリテーターは、全国に600名以上います。SDGsや地方創生に対して、地域や組織に変革を起こしたい人がこれだけ集まっているとも受け取ることができます。ファシリテーターのみなさん、自薦他薦は問いませんので、「こんな事例取り上げてほしい、こんなことをやっている」というインタビューを受けてもいいよという方をお待ちしています。